アラン・ドロンの特集なのだろうか、彼の主演映画が衛星テレビで連日放映されている。一昨日からはテレビ用映画の『アラン・ドロンの刑事物語』という一回一時間四十五分のドラマがあり、今晩がその最終回となっている。彼はマルセーユの警察上層部を巻き込んでのスキャンダルに敢然と闘う実にカッコイイ退職間近の刑事を演じている。もともと、『太陽がいっぱい』の青年のように、なんとか成り上がりたいという、美男だが、どちらかというと品性のない男の哀愁みたいなものを漂わせた俳優だったが、今度の映画ではそれなりの年輪を重ねた風格のある男に仕上がっている。今何歳になったのだろうか。
ストーリーは、モロッコあたりから押し寄せてきたアラブ系住民がからんだ犯罪を扱っているが、それにしても現在のフランスが抱える人種問題の底の深さを思わせる。アメリカの黒人やヒスパニック問題のフランス版というところか。
しかし、そんなことより、この映画の舞台である地中海の息を呑むような美しさに感動する。飛行機(それ自体古臭い言葉だが)に乗るのが怖いので、もう一生海外に行かなくてもいいと思っている私たちでも、思わずもう一度あの地中海の光と色と風を感じたいと本気に思ったほどである。モンブラン・インクのロイヤル・ブルーを垂らしたような、あの気が違ってしまいそうな深い藍色……
たぶん行かないだろう。その代わり、懐かしくなったら、『太陽がいっぱい』や今度の『刑事物語』を見てため息をつくことにしよう。そんなことだったら、ビデオをけちって3倍速などではなく「普通」で録画すればよかった。
「談話室」
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