八月は死者の月

 最近ではコマーシャリズムにまんまと乗せられて本来の宗教色抜きの馬鹿げたハロウィンが盛んになって来たが、キリスト教国では十一月(一日が「諸聖人(すべての死者)の日でその前日がハロウィン)が死者の月。日本ではひと月遅れの盂蘭(うら)盆(十五日)のある八月がそれに当たるのであろう。もちろん私の中では六日・九日の原爆投下記念日と十五日の終戦(正確には敗戦)記念日のある八月が戦後新たな意味で死者の月となっている。

 実は先日、或る新聞社から平和についての短い原稿を依頼されたのだが、その返事に月末までなら何とか書きましょう、と連絡したあと、その月末が私の中では七月末と意識されていたことに気付き(すでに八月に入っていたのに)、慌てて、せっかくの機会だから十日ごろまでに書きます、と伝えたところだ。つまり恥ずかしいことにこの暑さのせいか、それとも歳のせいか、いや後者であろう、ボケは曜日の混同をはるかに越えて、今や月の混同にまで進んだわけだ。

 ともあれ、最近の防衛相更迭をめぐる馬鹿げた政治劇を見るにつけ、今や日本人の中に八月を死者の月とする意識が消えかかっているのではとにわかに心配になってきた。確かに毎年戦死者にまつわる各種式典が開催され、それが報道されることはあっても、一般にはどこかの花火大会レベルまで成り下がっているのではないか。昨夜そんなことを考えているうちに、どうしても依頼原稿を書きたくなって、一気に書き上げ、たぶん今日明日は休みであろうが手元に置くと際限なく手を入れる危険があるので、今朝送信したところである。採用された場合は、また上の新聞掲載欄に収録するつもり。お楽しみに。

 月の取り違えもそうだが、最近とみに年齢を意識するようになった。原稿にも書いたが、何かと物議をかもしている安倍首相は昭和29年生まれ。普段そんな言葉遣いなどしたことがないが、十四年生まれの私からすれば彼など「ほんの若造」である。半世紀近く前(ワオーッ)「戦争を知らない子供たち」(北山修作詞・杉田二郎作曲)という歌がヒットしたが、稲田にしろ安倍にしろ、戦争の悲惨さなど体験したことのない世代、まさに戦争を火遊び程度にしか考えない危険な「若者たち」である。

 ところで今我が家は少し寂しくなっている。一昨日から来週月曜まで、頴美と愛はシスターたちの企画した神戸までのツアーに招待されて留守だからである。逆にその前日は、友人のロブレードさんに先導されてスペインのテレビ局の三人が取材に訪れ、この陋屋も国際色豊かに賑やかだった。インタビューの前、女性ディレクターからカメラに目線を向けないで、私の眼を見て話してください、と言われ「それは私にとって願ってもないシチュエーション」と軽い冗談をかますことはできたが、いざカメラが回り始めると、さび付いたわがスペイン語、果たして言いたいことが伝わったかどうかは大いに疑問である。ただし大事なところはロブレードさんの通訳入りだったのでなんとか切り抜けることができた。それにベッドに寝ている美子も撮ってくれたのは嬉しかった。さてどんな番組になるかは想像もつかないが、できあがったら電送してくれるそうなので、その時は上の「メディア掲載履歴」に載せるつもり。これもお楽しみに。

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佐々木 孝

佐々木 孝 について

佐々木孝(ささき・たかし) 1939年北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。1962年同学科卒業。5年間の修練生活の後、1967年イエズス会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授、1982年教授となる。1984年常葉学園大学でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、東京外国語大学、駒沢大学、法政大学、早稲田大学などでも非常勤講師を務める。2002年定年を前に退職、病身の妻を伴い父祖の地・福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり「モノディアロゴス(Monodiálogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」の名を冠したブログを死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。2018年12月20日、小細胞肺がんのため宮城県立がんセンターにて死去(享年79)。洗礼名フランシスコ。
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1 Response to 八月は死者の月

  1. 佐々木あずさ のコメント:

    モノディアロゴスで私の脳も活性化しています(笑)。文学あり、政治談議あり、ウイットとユーモア、痛快な一刺し(もちろん、たいそうな権力に対して)も!!美子奥さまと先生の暮らしが、世界に発信されるのですね。今からスペインの取材番組を拝見することを楽しみにしています。

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