鳥の物語


※これはあの大好きな『銀の匙』の作家・中勘助の同名のお話ではなく、とびきり現代の寓話です。 

 あるところに大きな、わりと見映えのいい池がありました。でもその池の水は一見きれいに見えましたが、それは見かけだけで、池の底が見えないほど濁ってました。150年ものあいだ(人間世界で言うと明治維新以降)淀んだままでしたから無理もありません。この池を支配する鳥(ちなみにスペイン語で鳥はアベと言います)一族の祖先にはこれまで二人も頭目が出た名門中の名門です。

 でもある時、かつて池の防災担当だった部下の大雁またの名をひしくい(漢字では鴻と書きます)がその鳥一族に傾倒する隣りの池の鳥から、一族の未来を担う雀の学校(校舎は籠です)を作るから何かと便宜を図ってくださいとの働きかけを受けました。その際、鳥社会でも禁じられている賄賂を持ってきたので、元防災担当は「無礼者、とっとと帰れ!」と言ったそうですが、そのあまりに芝居じみた説明を聞いて、それは後からの口裏合わせでは、ともっぱらの噂です。でもボス鳥をはじめそのことを必死に隠そうとしています。とんでもない巨額のお金が関係しているので、当然の疑惑です。

 そんな折、今度はこの池に隣接する稲田に汚染水が流れ込んでいることが判明し、鳥一族は大慌てです。いよいよヤキが回ってきたのかも知れません。

 今日も池にはしきりに動きまわる一族の鳥たちの姿が遠目にも見えますが、そんな時、むかし人間世界で流行った小松政夫の戯れ歌がどこからともなく聞こえてきました。

    ♫♪ しらけ鳥 飛んでゆく 南の空へ
      みじめ みじめ
      しらけないで しらけないで しらけたけれど
      みじめ みじめ ♫♪

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fuji-teivo について

佐々木孝(ささき・たかし)  1939年北海道帯広市生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科、同大学文学部哲学科卒業。清泉女子大学、常葉学園大学、東京純心女子大学教授などを歴任。専門はスペイン思想・人間学。定年前に退職し、父祖の地・福島県南相馬市に転居、現在に至る。主な著書に『ドン・キホーテの哲学―ウナムーノの思想と生涯』(講談社)、『モノディアロゴス』(行路社)、『原発禍を生きる』(論創社、これは香港、韓国そしてスペインでそれぞれ翻訳出版された)、『スペイン文化入門』(彩流社)など。訳書にオルテガ『ドン・キホ-テをめぐる思索』(末来社)、同『哲学の起源』(法政大学出版局)、マダリアーガ『情熱の構造』(れんが書房新社)、ビトリア『人類共通の法を求めて』(岩波書店)ほかがある。  なお著者はブログ「モノディアロゴス」(http://fuji-teivo.com)で発信を続けるほか、『モノディアロゴス』シリーズを初め20数冊の私家本(呑空庵刊)を作っている。
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鳥の物語 への3件のフィードバック

  1. 澤井禮道(哲郎) のコメント:

     久し振りに、佐々木総長直々の「モノディアロゴス」学部の講義に接して、心安らいでいます。有り難うございます。
     今日3月15日は、愚老の二度目の、15回目の誕生日ですので、記念の日に、南相馬大学佐々木総長の本校講座に、勝手ながら、愚老の記念のコメントをお願いしています。
     15年前、生命懸けで「ルビコン」を渉っていました。この日は、ご承知のように2000年も前、愚老の数寄な偉人のシーザーが暗殺された日です。その日に、「挑戦する」などと、どこまでも「」マンのぐろうで、その癖?は今も続いています。6年前のあの日も、新聞記事に載った記事を頼って、「モノディアロゴス」に挑戦していました。その結果まで書き続けますと、明日の朝になりそうですので、「今日のところは、でんでん(云々)」で…。
     末筆ながら、美子奥様と、ご子息一家の、ご健康と、ご繁栄をお祈りしています。
     それにしても、「ミジメ」なのは、アベノセイケンでしょうか?、それとも主権者なのでしょうか?ネ。又よろしくお願い致します。
     

  2. 佐々木あずさ のコメント:

    いや~、まいった。腹の底から笑わせていただきました。スペイン思想家による風刺頓智話。一人で楽しんでいるわけにはいかないご時世です。多かれ少なかれ、イライラ、ハラハラしている多くの方たちに、フェイスブックでご紹介させていただきますことお許しください。

  3. 浜田陽太郎 のコメント:

    うまーく、色々な要素がはまって極上のパロディができましたね。物書きとしての腕前に感服です。私もFacebookでシェアさせていただきました!

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